反ったレコードをほぼ直す便利グッズ Mattaira (マッタイラ) を作りました。 | 中川 伸 |
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重要な追記のお知らせ塩化ビニールのレコードには形状記憶効果に似た性質が少しだけ残っているようです。もともと大福餅のような形から暖めてプレスすることでレコードになります。その後に反りの原因としての力が加わって反ります。これだけを戻せれば良いのですが、暖めると元の大福餅の形にも戻ろうとします。そのため全体が縮み、センタースピンドルに入らなくなるものや、外周スタビライザーをくぐり抜ける盤も出てきます。それでも均等に縮めば良いのでしょうが、外周が多く縮めば大きなお皿のように縁が盛り上り、逆に内周が多く縮めば縁がワカメのようにウネリます。形状記億効果は、盤の素材や着色材やその量や製造温度や厚みや年代によって異なります。その為、暖めてうまく直る盤もあれば、直らない盤もあり、すべての盤を平らにするのは難しいのが現状です。
また、挟む板とレコードでは熱膨張が異なるので、外周はしっかり止めない方が加熱によるストレスが上手く逃げるので好ましい傾向はあります。なので外周はしっかり挟まずに僅かな隙間を持たせるような金具を作りました。使い方は普通に締めてから少し緩めて僅かな隙間を作ります。これによってストレスを逃がします。
簡単に入手可能な盤にて練習をして、自己責任にてご使用下さい。上手く行く事が多いのですが、うまく行かない盤は同種の他社製品に資料が載っていますので、それらを参考にして頂ければ幸いです。
それから温度計は分解能が 0.1度のものに変更しており、そのため表示は幾らか遅れます。つまり、実際にはもう少し早くレコードは立ち上がっているのですが、温度計は少し遅れて表示しているのが実情です。電気座布団の温度設定は2から4の位置で120分ですが、終了時に58度から65度を目安にしてにてください。保温や放熱を調整して盤は入れずにテストをして感覚を掴んでから盤には使用して下さい。長期にわたって使用しな場合はバッテリーを抜いて電池の消耗を防いで下さい。(2022年7月16日追記分)
反ったレコードは僅かながらもあるものです。ありふれた盤であれば買い直すことも可能ですが、希少な盤だとそうは行きません。平らにするための、本格的な製品はあるのですが、かなり高価です。業務用には適しますが、一般人なら使用頻度からして躊躇するでしょう。そこで安価な方法を考えました。
そもそも反った原因は曲がった状態が長時間続いたためで、真っ直ぐにし、時間を掛ければ直せる筈です。でも、実際にやってみると半年から1年以上といった期間が掛かるので、温度を上げることで加速をします。しかし、上げ過ぎれば盤にダメージを与える可能性があるので設定温度と過熱時間の管理は重要です。目安は60℃近辺になりますが、厳密には、盤が作られた年代やレコードメーカーによって異なります。そこで低目で試し、熟練すれば徐々に温度を上げるのが安全かも知れません。
これらの機能を、一から作るとなればやはり高価になってしまいます。そこで、すでに存在しているものを上手く組み合わせることを考えました。今では便利なものが売られていて、それは温度調整機能とタイマー機能が付いた30cm×60cmの電気座布団です。また加熱し過ぎないよう温度管理をしますが、それもよくできた温度計があります。次は盤を正しく平らにする構造体と、熱を均等にするための、適当な箱さえあれば可能です。
さて、修正の原理ですが、まずは盤のレーベル面と、グルーブガイドを平らな板で挟むことです。音溝の部分に触れないようにすることは重要です。理由は髪の毛などが入ってしまうと跡が付いて、その音も出てしまうからです。盤の厚さはレーベル面とグルーヴガイド部では微妙に異なっているので、僅かな弾力があればより適合します。そして更なる性質としては静電気を帯びにくく、熱に強い材料といえます。サイズはレコードと同じ規格の301mmを直径とし、厚みは3mmです。他に、色んな工夫を加えて最適化しました。
終わったら必ず1時間程度放置して温度がしっかりと下がったところで開けます。くれぐれも慌てないようにしてください。反りを完璧に直そうとするよりも、針跳びが起きないようにすればOKという位の方が、音への影響は少なそうです。少しの反ならピュアフラットで補正できます。
付属の温度計は高精度品ではないので幾らかの誤差はあります。表示が高めか低めかは個体差があるので、気温と沸騰しているお湯の100℃を参考にすればよりベターでしょう。
円板の反対面には温度に強い0.15mm厚のテフロンテープにて段差を設けているので、裏返して使う事でグルーヴガイドの無いフラット盤への対応も可能です。DIYが好きな人なら、この原理に沿ってテープを貼れば25cm盤や17cm盤にも対応可能です。17cm盤用には1.6mm厚位のボール紙でEP用アダプタをカッターナイフで作れば利用可能です。回す訳ではないので目測で置いても良さそうですが、ご希望の場合はご相談ください。なおSP盤は塩化ビニールではなく、シェラックでできているので、電気毛布程度の温度では修正困難です。
使い方に慣れるまでは慎重に行うのは良いかもしれません。埃が付きにくいように静電気を弱めるにはNON-STATが有効に働く筈です。くれぐれも、ありふれている中古レコードでしっかり練習してから貴重な盤に取り掛かかるようにしてください。DJでスクラッチをする人達は音飛びがしないよう盤の平面性にはかなり気を使っているそうです。
具体的な使い方はレコードを2枚の円板で挟み、センターをネジで留め、周り8ヶ所を付属のクリップで挟みます。電気座布団を2つ折りにし、その間に入れて中くらいのクリップ4個で角を挟みます。温度センサーを円板の中央付近にセットし、外箱に入れ、付属のマジックベルトで止めます。先ずは温度設定を2の位置にして120分で行います。温度を見ながら季節によって温度設定を変えますが、65℃は超えないようにして下さい。中間の温度にしたい場合は蓋を適度に開けるなどの工夫をします。
温度は上がりすぎると、全体が縮む可能性もあります。するとセンターピンに入らなくなることもあるので、その場合には、盤をゴミ箱などの上に乗せて先の細いハサミを開いて片側の刃だけ入れて回して広げます。この方法はセンターの出ていない盤の修正にも使えます。Mattairaは100台分を発注していますが、どの程度の需要があるかは分かりません。それで終わる可能性もありますが、需要があれば追加生産は可能です。価格は28,600円(税込)で、円板が2枚、センターを留めるボルトとナット、特別なクリップ8個、中クリップ4個、電気座布団、温度計、外箱、マジックベルトです。省資源の観点から、このページになるべく書き込んでいるので、取扱説明書は控えておりますので、宜しくお願い致します。(2022年3月4日)(2022年7月16日改定)
Mattaira \26,000(税別) 三井住友銀行清瀬支店普通口座3064084 有限会社フィデリックス
204-0022 東京都清瀬市松山2-15-14 TEL&FAX 042-493-7082 mail: info@fidelix.jp