LPレコードを最大限に生かす方法(その3) 寒くても即座に良い音を聴く方法 | 中川 伸 |
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カートリッジは室温20℃で性能を規定しているメーカーが多いようです。実際には室温が高くなった場合に、音が悪くなったり、不都合が起きた経験はほとんどありません。しかし、室温が低くなった場合には音が悪くなったり、トレースが上手くできなくて、ビリつくことは常に経験します。
冬場に聴く場合は部屋を暖房すればよい理屈ですが、すぐには温まりません。かといって20℃にするのもどうかと思います。近年なら少しでも厚着をし、省エネのために室温を下げ、環境問題に配慮したいものです。
私は15年ほど前から写真のような方法を取っていますが、非常に快適です。ミニランプやミニレフランプを使って何らかの工夫をし、上方からカートリッジを照らします。私は最初にカートリッジを手で暖めるので、ものの数分で安定します。
ちなみに、ここで使っているカートリッジはソニーのXL-MC9で、ヘッドシェルはオーディオテクニカのAT-LH13/OCCを2ピンに改造した13gのものですが、指かけは外しゴムリングも外しています。スタビライザーはノリタケのクリスタルスタブライザーのAタイプで、LPの下はジェルトーンのクリスタルガラスのターンテーブルシートになっています。奥にあるのはLPの反りを無くすため、30℃だけ低い表示になるよう目盛りをずらした温度計です。レコードを止めてカートリッジのそばにこのような温度計を置き、20℃強になるよう電球のW数や距離を調整すれば良いでしょう。さほど厳密でなくとも構いません。
ついでながら、カートリッジは何年ほど持つのか?先ずはゴムダンパーですが、専門家に確認しましたら、窒素が含まれているものは何年かで劣化しますが、窒素が含まれていないものは数十年でも大丈夫なようで、ほとんどは含まれていないのとのことでした。現に30年〜40年経っている手元のカートリッジは殆どがOKです。
また、針先チップが金属台とダイヤモンドで接合されているものは、金属部分が腐食し、ダイヤモンドがポロリと取れてしまいます。これは古いものには結構見受けられます。カンチレバーが腐食して折れたものも少数ながらあります。MC型で長時間使った場合には金属疲労でコイルが断線するものもあります。コイルの周辺に鉄粉が付着している場合もありますが、そんな場合は非磁性のピンセットで両面テープの粘着力を利用して丁寧に取り除くとすっきりとした音になります。つまり、ルーペで見て正常で、指で触ってコンプライアンスが常識的な感触で、正常に音が出ているなら大丈夫と思って差し支えないでしょう。