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ディジタルレコーダーをテストしました 中川 伸

2006年秋に、友人であるヴァイオリニストの盛野直樹さんから、ディジタルレコーダーは何が良いのか?という質問を受けました。彼はTC-D5やWM-D6のカセットレコーダーを持っているのですが、生徒の発表会を録音し、CDで配布したいとのことでした。私はディジタルレコーダーに詳しくなかったので、ZOOMのH4か、EDIROLのR-09か、M-AUDIOのMicroTrack 24/96の3機種の中から好きなのを選べば良いのでは?と答えました。彼はインターネットなどで調べ、H4を買いました。その後、別な友人でMicro Track 24/96を買った人がいました。さらに、別な友人でEDIROLのR-1を持っている人がいましたので、この際、3台を借りてテストをしてみようということになりました。ヴァイオリニストはこの話にとても乗り気で、H4と愛用ヴァイオリンを持参し、協力してくれることになりました。

彼は2007年2月20日に来社してくれましたが、機械のテストの前にヴァイオリン曲のCDをかけ、新型ハーモネーターAH-120Kを聴いてもらいました。超高域を入れないとキンキンするが、入れ過ぎると人工的な感じがして、適量を入れると本物らしくなるとのことでした。彼は私の設定より、1dBほど少なく調整してちょうど良いと言っていました。そういえば、2006年秋に機会があって、名器ゴフリラを愛用しているヴァイオリニストの安田紀生子さんにAH-120Kを聴いてもらった時も、ほんの少しレベルを下げて、にっこりうなずいてもらえました。(AH-120Kは連続可変ですが、SH-20KのEFFECTスイッチは2dBステップで、この間が欲しいと愛用者から言われることもまれにあります。私は効果を分かってもらいたい心理から、どうしてもほんの少しだけ強めにしてしまいがちです。)
使うマイクは事前に自分の声による簡易テストによって、ECM-280、ECM-969、ECM-990F、ECM-939LT、ECM-99、ECM-717(以上ソニー)、MU-201(ビクター)、の中から標準プラグのECM-990F、ミニプラグのECM-717の2機種を選択しておきました。曲はブルッフのヴァイオリンコンチェルト1番の冒頭でやることにしましたが、その前に弓の選択をしました。以前にも弓の比較テストをして大きな差があることは知っていたのですが、改めてその違いの大きさに驚きました。彼は経験的にこの部屋ならこの弓が合うだろうと最初に選んだものがやはり、圧倒的に良かったです。他の3本の弓は音が重過ぎて冴えませんでした。でも大きなホールでは音が最も重過ぎる弓が良いことが多いとのことですから、実に奥が深いものです。ちなみに弓の毛は全く同じで竿のみの違いだからなんとも不思議です。弓がマッチングしたときの音はまことに美しく輝いていて広がり、また、音量も大きくて本当に驚きました。その他の条件もうまくマッチングしたのでしょう?勿論、私が聴いた彼の音の中でも最高で、億単位の楽器にも決して負けてはいませんでした。

 機械のテストですが、いずれの機種も最高のフォーマットで、また、バッテリーでのテストをしました。H4は24bit96kHzで、MicroTrack 24/96は24bit96kHzで、R1は24bit 44.1kHzでした。音は再現性を考慮し、使い慣れているソニーの業務用ヘッドフォンMDR-CD900ST(標準とミニの2ウエイに自分で改造)で聴きました。彼が持ってきた同価格帯の他社製品に比べ、鮮度が高くてモニターにも適した音なので、驚いて欲しがっていました。
 第1ラウンドは純正マイクでテスト。H4はまずまずです。MicroTrack 24/96は少し細身でシャリシャリします。専用マイクのせいかも知れないので、別なマイクでテストをすることにしました。R-1は44.1kHzのせいか少しディジタルぽい音でした。詳しいテストも続けたかったのですが、ヴァイオリニストの負担も考え、泣く泣く脱落ということになりました。(ちなみにフィデリックスでは44.1kHzのCDフォーマットでは高域が不足と感じ、ハーモネーターを開発しました。)
 第2ラウンドは ECM-717でテスト。H4とMicroTrack 24/96では大差が無いように思えました。ここでカセットWM-D6とTC-D5Mも参考のため参加しました。いずれもメタルテープで、ドルビーオフで、リミッター類はオフです。D6は最高音が少しだけ粗いということで、これも泣く泣く脱落ということになりました。D5Mはなかなかです。
 第3ラウンドはECM-990F(90°)でテスト。マイクが大きいと音に余裕が出るのかも知れません。H4は、もはや何ら不満の無い音ですが、MicroTrack 24/96の方が鮮明かも?というのが2人の一致した意見でした。D5Mはやっぱりいいなー。絵で言うと、鮮明ではあっても平面的なデジカメや液晶TVに対し、深みと奥行き感のあるフィルムカメラや高性能ブラウン管に通じるような味わい(密度感)があります。なるべくならECM-990F+TC-D5Mで撮りたいなーと思いました。ヴァイオリニストは比べてはいけないとも言っていました。
 このテスト条件はヘッドフォンアンプの良いものがいくらか有利に働きますので、本当は収録された音を別な機器による同一条件で再生したかったし、EDIROL のR-09やKORGのMR-1やMR-1000 やソニーのPCM-D1のテストもしたかったところです。また、マイクも100kHzまで音楽収録できるサンケンマイクロホンのCO-100Kでテストしたかったのですが、残念ながら1本しかありませんでした。しかし、H4のマイクはECM-717よりは上で、 ECM-990Fとの間くらいのクオリティーは持っていましたので、ヴァイオリニストは用途からして、自分で選んだH4にとても満足した様子でした。彼は松戸や石神井でレッスンをしていますが、近日中に大阪を拠点としたヴァイオリン教室を開きますので、大人であっても弾き始めてみたい方はぜひ問い合わせてみてください。

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