カートリッジの改造方法 | 中川 伸 |
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カートリッジは消耗品ですから、少しでも良い音で聴いて針を減らしたいものです。そこで普段着用カートリッジの改造方法のご紹介です。写真でサンドペーパー内の左上にDL-103Rがあります。この状態でこすって2mmほどプラスティックを削りますとマグネットが出てきますが、全部がピッタリと出るまで、きっちり削ります。そしたら、ピン側の隙間にカッターナイフの刃を無理やり入れると、カバーの接着は外れます。さらに、小さなマイナスドライバーでそーっとこじ開けると、右のように裸になってしまいます。私はその裸になったものの台としてDL-103Rの手前のような丸い台を作りました。一般的ではないので、ここではその右にあるようなM8用の外形φ18、厚み1.6mmの真鍮のワッシャに12.7mmの間隔になるように2個のφ2.6mmの穴を開けて使います。
この台とカートリッジのマグネットとを瞬間接着剤で貼り付けるとその右の写真のようになります。ここで注意をしなくてはならないのが、ピンには細いコイルの線がハンダ付けされていて、とても切れやすいため、ここには触らないようにします。切れても器用な方ならハンダ付けをして直すこともできますが、普通の人には難しいでしょう。ヘッドシェル内の配線は99.999999%の高純度スピーカーコード(アクロテックかオルトフォンだった)の切れ端を使いました。ハンダは電気が通らないと思って金属と金属を接触させ、ハンダは接着剤のつもりで作業をしましょう。このカートリッジはピンの配置から線はクロスしますので、ショートしないように間隔を開けてから瞬間接着剤でクロス点を固定します。なおここで使ったヘッドシェルはオーディオテクニカのAT-LH13/OCCを写真のように2ピンに改造したものです。
以上の改造によって、がぜん鮮明になります。この103シリーズは悪条件でも安定にレコードの音を拾ってくれます。うんと高い音がさらに優しく美しくなってくれれば、とりあえずは言うことがなくなってしまうのですが、、、。
その右はオーディオテクニカのAT-F3Uです。このカートリッジは安価であってもなかなか鮮明な音なのですが、音の厚みや重量感にはやや欠け、少し音色も明るすぎな感じがします。そこでまずはカートリッジを挟む工夫をしました。M2ネジ用のタップが切ってある長さ10mmの6角柱カラーは市販されていますが、これを写真のようにφ2.6mmのドリルで貫通させます。それに長さ15mmのφ2.6mmの真鍮製ネジを使って写真のようにカートリッジをヘッドシェルに取り付けます。ここで、カラーのカートリッジと接する6角形の内側部分をヤスリで少しだけ斜めに削っています。すると、ねじを締めるにしたがって、6角柱は内側へ傾こうとします。そのため、カートリッジは挟みつけることになります。
これによってかなり低音が力強く、太くなります。同じく高純度の線でハンダ付けをしましたが、なぜかある音の高さでピーンと響き、この線の共振と思えるような音がしました。そこで、厚手の両面テープをU字にして線を挟むようにしたら止まりました。こういったダンピング材は必要最小限にしないと音楽の躍動感も失せることがあります。さらに、プラスティックの保護用カバーを外してみました。カッターナイフを金色とグレーの隙間に差し込んで剥がします。するとスッキリした音色になります。結果は改造前に比べると何倍も高価なもののように聴こえますが、浅い感じだけはほんの僅か残ってはいます。
以下のものは現行製品ではありませんが、改造の参考にして下さい。FR社のMC201の内部をばらしたものを、ドリルの刃の右にあるような8角形の中に坂のある台に貼り付けたものが、黒いヘッドシェルのものです。お気に入りのFR-1MK2よりも低音は明らかに力があります。これは確か鉄心入りだったと記憶していますが、バランスはとってもいいです。
同じような形の台をエラックのESG795やSTS555E用に角度を変えたものも作りました。MMなら私はアメリカ系の明るい音色のものよりも、ヨーロッパ系のややしっとりした音色の方が好きなので、エラックのものはだいたい気に入っています。実はこの台、エラック用に作ったものをFR用に流用したという訳です。
日本のカートリッジでエラックに似た音色のものはエクセルサウンドの赤い針のもので、これにも台を流用しました。このカートリッジのコストパーフォーマンスはもう抜群です。右端はシュアーのM44GでまさにMMの標準です。これはプラスティクを剥がして直接ヘッドシェルに瞬間接着剤で貼り付けています。
なお、MMカートリッジは針をしっかりと固定するために、針側のプラスティック部分とボディーの間にほんの少しの接着剤をつまよう枝のようなものを使って塗ることで固定しています。強く引っ張れば、はがれる程度になっています。
私は本格的な精密作業には実体顕微鏡を使いますが、こういった程度の加工なら写真後部にあるヘッドルーペで十分です。右側の台付きのレンズでも使えます。