レコード針の磨耗を簡単に見る方法 | 中川 伸 |
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最初、レコード針は球面でできていますが、磨耗するにしたがい、接触部分に45度の平らな面ができてきて、それが大きくなってきます。ですから、この面に光を当てると反射も強くなってきます。そのため、写真のようにライトを真横から当て、針のとがった方向から見ると10倍くらいのルーペでも反射が良く見えるようになります。
カートリッジは真横からの光の反射が最も強くなって、やや前方や、やや後方からの角度を変えた反射が弱くなっていれば磨耗していることが分かります。新しい針と、古い針を見比べ、コツを習得することで、磨耗具合と反射の関係が良く分かるようになってきます。ライトとルーペの関係はこの逆でもかまいません。実は、逆の方がバックを黒にできて見やすいのですが、この写真の方が角度は変えやすいのです。
ところで、レコード針は減るの?という素朴な疑問があります。純粋に塩化ビニールとダイヤモンドだけで摩擦をするなら、ダイヤモンドは減りません。昔NHKで、ガムテープで密閉したクリーンな条件と、普通の条件を作り出して、オートプレイアーで掛け続ける実験をしていました。するとクリーンな条件による2000時間では全く減っていませんでした。多分、1万時間でも平気でしょう。しかし、普通の条件では、小さな砂埃が静電気などで付着し、ちりちりぱちぱちと音がします。このため小さな砂埃と衝突をしてダイヤモンド分子が少しずつ欠けていって減るのです。
ではどの位持つのか?私は中古LP(主にイタリアオペラ)を買い集めてきては、デンオンの103RとスタックスのコンデンサーヘッドホンΛシグネチュアで仕事をしながら聴きつづけていた時期がありました。このときは約500時間位でした。スピーカーだと、そこまでは敏感でないので1000時間位まで、なんとか使えるというのが経験的な結論です。その頃は1年で4本を使い切りました。TEACの電池式スタイラスクリーナーで如何に掃除をしようとも内周では音が濁ってきました。今では少しでも良い音を聴きながら、針も大切にしようと、まめにVPIという米国製の液体式レコードクーナーで掃除をして聴くようにしています。
つまり、針屋さんがいう200〜300時間はワーストケースですが、かといって普通の条件では減らないということも無いというのが結論です。