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11月26日に26億円分のヴァイオリンの音を聴いてきました 中川 伸

 聴いた日は2006年11月26日、場所はアルテ工房で、主宰の中澤宗幸氏は昔にガダニーニの真偽問題が持ち上がったとき、鑑定の本場であるイギリスに送ろうとしたら、日本には中澤宗幸氏がいるからそこで鑑定してもらえば?といわれた方です。その日に弾いたヴァイオリニストは中澤きみ子様です。弾いた楽器はストラディヴァリウスの1714年製ダ・ヴィンチと1717年製ボガチュと1727年製のものとガダニーニの1753年製の計4本でした。
 率直な印象ですが、最初に1714年製のダ・ヴィンチで聴きましたが、あれ!これがストラディヴァリウスならこの部屋はずいぶんデッドなのかな?と思いました。これまでに何本かのかのストラディヴァリウスは聴いていましたから。ところが数分経つと、おお!音が輝き始めました。そしてぐんぐん鳴り出してきました。そして調子が乗ってきて30分ほどしたところで楽器の弾き比べに入りました。1714年、1717年、1727年製のストラディヴァリウスと1753年のガダニーニを何小節かずつ弾きました。
 そしてまたダ・ヴィンチにもどって、30分ほど演奏が続きました。最後はうーん、さすが、、、。という感じにすっかりなりました。中澤きみ子様は「いつも弾いているのに、ストラディヴァリウスはプライドが高くて、そう簡単にいい音を出してはくれない。名器にはこういった傾向があるが、ストラディヴァリウスは特に顕著。」とも言っていました。他のヴァイオリニストも言っていましたが、ヴァイオリンはなかなか気分やで、演奏会では応援をしてくれたり意地悪をしたりもするそうです。
 ところで15億のヴァイオリンはとても買うことができませんが、そのヴァイオリンを使ったCDなら買えるということで、カメラータ・トウキョウから出ているモーツアルト協奏曲全集を買って、サインも頂きました。圧縮サウンドですがヴァイオリニストのサイトでは演奏の試聴もできます。

 4番と5番はこのダ・ヴィンチが使われています。価格がつけられるような代物ではないのですが無理やり教えてもらいました。するとストラディヴァリウスの1714年製ダ・ヴィンチは15億、1717年製ボガチュは7億、1727年製は3億、1753年製のガダニーニは7000万とのことでした。私の印象では15億、7000万、3億、7億という順番で良く聴こえました。中澤宗幸氏によれば「弾き込んで、2000人のホールで聴かなければ、本当の価値はなかなか分からず、そうすれば多くの人に良く分かるものだ。」とのことでした。また、「ガダニーニはストラディヴァリの工房で働いていたのでガダニーニが実際に作ったストラディヴァリウスも結構ある。」とのことでした。
 私は弦楽器が好きなので、これまでにも名器の生音は結構聴いてきました。ガルネリウスではチョン・キョンファ、アーロン・ローザンド、アテフ・ハリムといった方々で、ストラディヴァリウスでは諏訪内晶子、天満敦子、アテフ・ハリムといった方々です。
 ゴフリラ(チェロではカザルスやアンナ・ピルスマが使っていて特に有名)では安田紀生子様です。ところで、以下の方々もいい音を出していたので印象に残っているのですが、楽器はなんだったのでしょうね?ローラ・ボベスコ、久保陽子、瀬戸瑶子、福崎至佐子、千住真理子(今のストラディヴァリウス・デュランティ以前)といった方々です。
 持ち帰ったCDを聴いてみました。ヴァイオリンの音は最もCDに入りにくく、生演奏の音とは違いますが、名器であることの片鱗は十二分に覗えると思います。ヴァイオリンはこする音があるからこそ、いい感じに聴こえるということも良く分かると思います。ところで2007年1月2日午後6時半に芸能人格付けランキングという番組で、中澤きみ子様が、多分、ストラディヴァリウスのダ・ヴィンチと安い楽器の弾き比べをやるそうです。関心のある方はTVの音ではありますが、この機会にぜひ聴き比べてみてください。

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