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声域と声質の雑学 中川 伸

 声域は高い方から女声でソプラノ、メゾソプラノ、アルト、男声でテノール、バリトン、バスが一般的です。他に男声が裏声で歌うカウンター・テナー(アルトかメゾソプラノ音域)や、稀に、より声域の高いソプラニスト(ソプラノ音域)もいます。昔は変声期前に去勢したカストラートもいましたが、今では人道的に許されません。そのため、もう聴くことはできませんが、ソプラニストに近かったようです。生まれつきのホルモンバランスによって変声期を迎えなかったソプラニスト(つまり天然のカストラート)もいるらしいのです。
 声質ですが、一般に軽い目から重い目まで、レジェーロ、リリコレジェーロ、リリコ、リリコスピント、ドラマティコと5段階に分けられたりします。他にブッフォ、カンタンテ、ヘンデル・テノール、ヴェルディ・バリトン、ヘルデンなどがあります。
 ですから声は全部で数十種類に分類されることになります。声質の分類は、単に声の軽い重いや、柔らかい硬い、細い太いだけではなく、厳密には表現力全体で判断されるべきだそうです。そして、オペラなどでは見合った役柄が決められるようです。ですから、明確に分けられるような性質のものではないのです。
 私にとっての主なレジェーロ役は、モーツアルトの魔笛の「夜の女王」で、はまり役はクリスティーナ・ドイテコム。また、主なドラマティコ役は、ヴェルディーの「オテロ」で、はまり役はマリオ・デル・モナコです。
 しかし、声域と声質の両立は難しい場合があります。そんな時の方法は、1)それでもこだわって声域と声質の両方を備えた希な歌い手を探しだす。2)声域を重視し、声質は妥協をする。3)その音符を別な低い音に代えて歌う。4)そのアリアのみ、全体に半音下げる。のどれかの方法を取ります。
 ヴェルディーの椿姫のアリアで「花から花へ」の終わりの方のミ♭(約1250Hz)は30%位の人は、別な低い音に替えて出しています。私は椿姫が特に好きなのでLPで20種類程ありますので、調べてみました。ミ♭を出しているのは、スコット、コトルバス、ローレンガー、モッフォ、サザーランド、ストラーダ、シルズ、トデッシュ、カラス(ギオーネ、サンティーニ、ジュリーニ、レッシーニョ、ムグナイの全ての盤)で、出していないのは、アルバネーゼ、テバルディー、ロスアンヘルス、ステルラ、フレーニ、カバリエ、でした。勿論、出さえすればいいという訳ではありませんが、出ないよりは、出た方がいいです。
 ちなみに私が最も好きなのは、録音も演奏も良いアンナ・モッフォ盤(プレヴィターリ指揮)です。マリア・カラスのジュリーニ盤も演奏は良いのですが、録音は残念ながらチェトラ盤もワルター協会盤も全く良くありません。以下でモッフォの映画版が見え、4分23秒と4分28秒の音がそのミ♭です。
http://www.youtube.com/watch?v=2Xn6p5hB7fU&feature=channel
http://www.youtube.com/watch?v=gn5tHNcfxvI
 プッチーニのラ・ボエームではテノールの最高音でド(約525Hz)が出てきます。中性的な声質なら出しやすいのですが、役柄にふさわしい男性的な声質でありながらも、このド出すのは難しいのです。そんな場合は、その音符が含まれるアリアだけを全て半音下げたりします。
 ベッリーニの清教徒にはファ(704Hz)が出てきますが、ベッリーニの知り合いで、この音が出せる特殊な声の持ち主(ジョヴァンニ・バッティスタ・ルビーニ)がいましたので、そのため、この曲を書いたようです。パバロッティーは裏声と良く分かるような声で、この音を出しています。

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