AH-120K > 使用方法 > よくある質問 > ご購入者の声 > 関連リンク > 購入方法
技術情報一覧 < PK分割はアンパランスか?(論より証拠)
PK分割はアンパランスか?(論より証拠) 中川 伸

 古いテーマですがPK分割のバランス性について、未だに問題視する人たちがいるようです。一度バランス性に問題があると思い込んでしまうと、なかなか頭から離れないようです。自然科学では実際の結果こそが最終的な結論になるので、実験してみました。私は電気の概念については良く理解しているつもりですが、計算ではうっかりミスをすることもあるので、それほど自信はありません。そのため実験で確かめることが多くなってしまい、その長い蓄積から実験はとても得意になりました。
 さて、実験は上の回路と写真で行い、オシロスコープの図を4つ取りました。所要時間は、製作に10分、測定に10分でした。左上は実験の都合から等価入力容量に見立てた2200pFが無い状態です。グリッド容量自体はそれほど大きくなくても、帰還容量はミラー効果で(電圧ゲイン+1)倍に見え、帰還容量の大きい真空管もありますので余裕を持ってこの値で実験しました。上から1KHzの入力波形、次がカソード側の波形でゲインが少し下がった同相になっています。一番下はプレート側の波形で逆相になっていますが正相のカソード側とレベルバランスは取れています。誰もが異論を唱えない結果です。
 右上の図はカソード側のみに2200pFを入れた状態で、上から入力波形、次がカソード側の波形でゲインが少し下がった同相のままです。2200pFが入ったので、インピーダンスが低い場所とはいえ少しだけ鈍っています。一番下はプレート側の波形で大きなオーバーシュートが加わっていますので、感度は5分の1に下げています。この場合のプレート側は意識されることがなかったようで、今まで触れられてもなく、解析もされなかったように思います。多分、意外な結果でしょう。
 左下の図はプレート側のみに2200pFを入れた状態です。上から入力波形、次がカソード側の波形でゲインが少し下がった同相になっていますが、ここに無視してもよいほどの小さなオーバーシュートが見られますが、これはプレート電圧の波形が真空管の内部抵抗を伝わってカソード側に伝わったものです。これも意外な結果でしょう。一番下はプレート側の波形で、ここに非常に大きな鈍りが観測できます。これは従来からよく言われている通りの結果で、インピーダンスが大きい場所のせいです。ちなみに感度は元に戻しました。
 右下の図はカソード側とプレート側の双方に2200pFを入れた状態で、現実的な動作に近いと言って良いでしょう。上から入力波形、次がカソード側の波形でゲインが少し鈍った同相になっています。一番下はプレート側の波形で、カソード側と同じ鈍りに戻っています。つまり、バランスは問題なく取れ、これはカソード側に入れたコンデンサーが高域を上昇させたためです。
 結論として、片側づつコンデンサーを入れて考えるとアンバランスな動作になりますが、双方にコンデンサーを入れればバランスは取れるといえます。この動作について、別な見方をすれば、カソード電流とプレート電流はほぼ同じになりますから、交流インピーダンスを同じにすれば、同じ電圧が出てくるという非常にシンプルで当たり前の結果になりました。
 さて、ここでまとめますと、論より証拠といえます。ガリレオはピサの斜塔の頂上から大小2種類の球を同時に落とし、両者が同時に着地するのを見せたと言われています。しかし、冥王星は理論で存在が予測され、それによって発見されたので、理論は重要です。NTTの研究所は理論派と実験派がチームを組んでプロジェクトを作ると研究員から聞きました。オーディオでは聴いてみなくては分からないことが沢山あるので実験はよりいっそう重要です。(2009年10月27日)

        
Copyright FIDELIX  フィデリックス  info@fidelix.jp