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TruPhase(トゥルフェイズ)の絶対位相についての補足。 中川 伸

私は1978年頃にはスピーカー端子の所で絶対位相を必ず合わせていました。その頃はアナログだったので認識としては主にハウリングループの関係だろうと思っていました。そして多くのレコードがたまたま合う方向だったのでしょう。デジタル時代になった頃からXLR接続も使われるようになり、2番ホットと3番ホットが混在した時期がありました。

左右が逆位相だと秒単位で気分が悪くなりますが、絶対位相は分かり易いソースとわかりにくいソースは確かにあります。人の声やピアノやコントラバスのピチカートでは分かり易く、ソースによっては結構な違いがあります。

しかし、私自身はどちらでも楽しめるので極端に神経質にはなりませんでした。最近になってレジェーロを使っているお客様から絶対位相を切り替えたいという要望がありました。非常に敏感になっているので必ず合わせて聴きたいとの事でした。しかし、「レジェーロの回路だと簡単にはできない」とお答えしました。しかし心のどこかで気になっていたのだと思います。

さてここからが本題です。私のオーディオ仲間で絶対位相にうるさくて、しかも詳しいF氏が居ます。彼は東芝EMI、日本ビクター、CBSソニーで録音エンジニアとして録音からカッティングまでの全工程をやっていました。

実際に、数1000の音楽ソースの絶対位相をオシロスコープで波形確認しながら、聴いても調べたそうです。彼によれば、楽器によってはオルガンのように全く分からないものから、わかりやすい人の声や打楽器まであるそうです。そして録音物を丹念に調べた結果、60%は合っていて、30%は逆になっていて、10%は不明だったそうです。これはある時代に限っての話です。

録音機材のXLR端子がヨーロッパは2番ホットでアメリカは3番ホットの時代だったので、アメリカ経由で日本へ来たテープでカットしたものは逆位相になってしまうそうです。日本でもXLRで3番ホットの機器があったりして混乱しやすい状況だったとも言えます。そんなわけで、1980年代の後半には絶対位相を切り替えられるCDプレーヤーが何機種か存在したそうです。

絶対位相のことはレコード会社でも問題になりかけましたが、これは分かる人も、分からない人も居て、極端に大きな問題では無いということで、うやむやになってしまったそうです。

面白い話ですが、ホイットニーヒューストンの有名な「I will always love you」の高いロングトーンから後ろが逆になっているとのことです。編集の都合でそうなったのでしょうが、なんとも興味深い話です。 でも今の録音物は概ね合っていることが多くなっているとのことでした。以上は絶対位相に最も敏感で、かつ最も詳しいF氏からのお話でした。

前の記事で「必ず合わせてくださいという強い意味ではありません。」と書いた通りで、自由で良いと思います。そして聴く人や音楽や装置によっても変わります。なので、こういうことは議論をしてもあまり意味の無いことで、やってみて音が変わると感じられるか、そうでないかが重要です。そして絶対位相が必要な人も不必要な人も居れば、今後は必要になる人も居ることでしょう。私は多分、先ずは面倒に感じ、NORMAL側の固定から始めると思います。(2020年9月25日)

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