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無料の回路シミュレーションソフトのデバイディングネットワークへの使用例 中川 伸

12dB/octのネットワークは、「電力」が半分になる-3dB点で古くはクロスされていました。しかし、1969年頃に山中式の引き算型チャンネルデバイダが発表され、これがきっかけとなってクロス点は-3dBか-6dBかの論争が起きました。実験の結果、放射抵抗の関係で「電圧」が半分になる-6dB点のクロスが好ましいという結論がラジオ技術誌から発表されました。 このため、それまでのQ=0.7ではなく、肩が丸くなったカーブのQ=0.5の設計が少しの期間だけ使われました。理論的には合成すればフラットになるので良いのですが、帯域外はできるだけシャープに切りたいというスピーカー側の現実があります。そこで、Q=0.7のシャープなままで、重なる部分を広げて-6dB点でクロスさせる方法に移行してゆきました。つまり、理想論ではなく、スピーカーの現実を考慮したカーブに移行したことになります。もしも「位相までも正確に!」という理想論なら6dB/octがベストですし、スピーカーが電気回路並にきれいに動くなら、そもそも切って繋ぐ必要など無いからです。当社で1982年に発売したデバイダLX-8も実は移行したカーブです。FOSTEXのスピーカーカタログに載っているネットワークの表も同じく移行したカーブです。ではこのカーブなら高域側を反転した合成後はどの程度うねるのかをシミュレーションしてみました。結果は以下のグラフのように、うねりは僅か±0.7dB程度なので、シャープに切れるメリットの方がずっと大きいことが分かります。これをMC-8DEMOで動作確認するには立ち上げた後、FileメニューからOpenでこの「Network」を指定して回路を取り込みます。次にAnalysisメニューからAC。そして、Runで以下のグラフが出ます。無料ソフトですが使いこなせば、このようにとっても有用です。

  • MC8用のデータです。
  • 無料の回路シミュレーションソフトのチャンネルデバイダへの使用例         中川 伸

     チャンネルデバイダへの応用です。やはり12db/octでQ=0.7の最平坦特性(バターワース特性)のものを−6dB点でクロスさせる1kHzの回路定数です。キャパシター4個の値を半分にすれば2kHzになるという関係です。ここでは半端な値を使っていますが、実際にはE24系列で問題は無いでしょう。当社の旧製品LX−8では音の純度をあげるため、フィルターアンプを通過しないフィデリックス独自の回路形式でしたが、割と強力なバッファーアンプが必要なためOPアンプでは難しく、ここでは一般的な回路を掲載しています。 ボルテージフォロアは100%のフィードバックが掛けられるタイプのOPアンプでもエミッターフォロアでもソースフォロアでも良いでしょうが、私ならコンプリメンタリーのソースフォロアにするでしょう。エミッターフォロアはコルピッツ発振器に変身しやすい(つまり発振しやすい)ので注意が必要です。3WAYのミッドレンジの場合は後段をローパス(ハイカット)フィルターにする方が良いでしょう。

       以下は1982年に当社が発売した旧製品LX−8の回路構成です。上記の一般的な回路と同じような特性になっていますが、信号経路は簡単になっているため音の純度は非常に高いです。ただし、独特な動作であり、割と強力なバッファーアンプが必要なため、設計するのは難しいです。

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