CAPRICE2台でのモノラル使用について | 中川 伸 |
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ES9018はモノラル使用が可能なので、CAPRICEもモノラル使用が可能な設計にしました。そして、ようやく環境が整いましたので色々なテストをしてみました。まずはHDMIによるI2Sですが、これはPS AudioのPWTが元祖です。フィデリックスではいち早くからPS Audioにコンタクトを取ってピン番号を準拠しました。
唯一異なるのはPS Audioでは使用していない18ピンに送り出し側から3.3Vを供給することで、確かなアイソレーションを取れるようにもしたことです(因みにHDMI規格では18ピンに5Vを供給する規格になっています)。この電源供給にはポリスイッチという電流制限素子を設けて安全性に配慮しています。供給されない場合はCAPRICE側から供給可能になっています。PWTにはすでに1個のHDMIコネクタが装備されていますが、もう1個を追加することでモノ2台使用が可能になります(写真)。これによりCAPRICEを2台使用して右専用と左専用のモノラル動作ができます。すると理論的なセパレーションは無限大が得られ、出力を並列にすればSNが3dB向上します。このついでにといっては何ですが、クロック2個と整流ダイオードもショットキータイプに交換しました。この効果についてはコメントする立場にはありませんので控えさせていただきます。SPDIFではPLLのバンド幅がLowestで安定ですが、I2SではMidでないとロックが安定にはなりません。ES9018にはどうもこういう傾向が他でもあるようです。
次にDSDですが、ES9018はDSD信号にも対応した設計になっていますので、DSD用に配線を変更できるように基板設計がしてあります。DSDについてもようやく環境が揃いましたのでやってみましたが、問題なく再生できました。ソースは
http://www.2l.no/hires/index.html
からダウンロードしたものです。再生に使ったボードは
http://fpga.cool.coocan.jp/electrart/usb_dual_audio.html
にあるものです。DSDの再生ソフトはこのボードを購入するとダウンロードできるPlayAudio.exeというソフトです。他にもDSDソフトはダウンロードして再生できます。
http://music.e-onkyo.com/artist/m101210_R.asp
また、ファイル形式が異なったとしてもaudiogateというソフトで変換できます。
http://www.korguser.net/audiogate/jp/download.html
SACDですが正規のHDMIからDSD信号を出せる映像機器もありますが、受け側を認証しないと信号は出さないようです。また、その信号は直接ES9018が受けられないような信号形式らしいのです。ところが、SACDとCDのみのオーディオ専用機器だと内部にES9018が受けられる信号形式が存在する場合があります。この信号を取り出して少しでも良い音を聴きたいと思うのはマニアとして当然の気持です。
そこで、あるSACD機を改造してこのDSD信号2個を取り出す改造を行いました(写真)。ここでちょっとした注意点です。DSD信号はクロックとLチャンネルとRチャンネルの3つの信号線で、クロックはI2Sと共通です。しかし、L/RとDATAのどちらにLチャンネルを割り当てるかは問題ですが、私は当初L/RをLチャンネルに当てるとHPに書きました。しかし、どうやら逆の方が標準らしいので、途中から変更しています。録音では左がチャンネル1で右はチャンネル2が標準のようです。つまり、ファーストヴァイオリンのある左が優先らしいのです。ですから優先信号のLチャンネルがDATAなのでRチャンネルはL/Rということのようです。
SPDIFの光はパッシブで分配するグッズがあります(写真)。光量は半分になりますが、元々汚れなどで落ちる分を見込んで強めに光らせているケースが多いので問題は無いようです。
SPDIFの同軸は第1のCAPRICEに信号をいれ、そこから分岐して第2のCAPRICEに信号を入れます。そして第1のCAPRICEの入力抵抗(82Ω)を外します。すると電気的には何ら問題なく2台使用が可能になります。分岐コネクタを使えば良いでしょう(写真)。写真の黄色いコードは撮影用であって推奨している訳ではありません。私がなるべくこういったパッシブな方法で分配するのは、アクティブタイプだと使用デバイスのスピードや電源から発生するノイズといった心配があるからです。当然ながら、中にはよくできた設計のものがあるのは言うまでもありません。
さて82Ωを外したものを普通の使い方をする場合にどうするかですが、ハイインピーダンスで受ける方が信号レベルは高くなってジッターが少なくなると主張している人もいます。2m以下の常識的な長さでは反射の影響は少ないので、外した方が良くなる可能性の方が高いかも知れません。つまり再び普通の使い方をするようになった場合でも、あえて82Ωを付け直す必要は無いかも知れないということです。
さて実験は始まったばかりなので、個別の詳細な報告はさておき、DSD(SADC)が凄いポテンシャルを実は持っていたことには全く驚いています。これまで何度もSACDの音はは聴いていて、高い音はデジタル臭くない音で私は好きですが、低音は柔らかく包み込むような音質傾向ではあっても、明快で攻撃的な迫力ある低音は控えめです。そんなこともあって私の周りのオーディオ仲間でもアンチSACDの人たちがいます。それでも私はSACDのデジタル臭くない音の方が好きです。今回、DSDでモノ使用をすると24/192kHzや24/352.8kHzなどではクロックを良くしたり電源を良くしたりで散々苦労してようやく出した音が、DSDではすんなり出てきます。歪感が少なく透明度の高い音で、低弦のガッ!ガッ!というアタック音にも迫力があります。生録のモニタールームでの録音機を通さない再生音を思い出しました。いやー全く驚いています。因みに、テストによく使ったのは遠藤真理さんの「ジャクリーヌの涙」というSACDです。この方の演奏はエルガーのチェロ協奏曲ホ短調を生で聴いているので音が分かっていることも理由ですが、体格以上の、ダイナミックな音までを出します。
モノ使用の効果などは別な機会での報告とさせて頂きますが、アースループが無くなることの重要性を実感しています。写真にはAES/EBUをRCAやBNCにへの変換グッズも載せましたが、これについても別な機会に説明いたします。HiFace EvoにはBNCとRCAがあり、口金だけの違いなので、並列動作は簡単にできます。後ろの白いケースはサンヨーのeneloop Music Boosterでリチウムイオンの9Vです。Evoに付属のスイッチング電源以上の音を出したいときに有効とされている電池です。(2011年1月20日)