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LPのスクラッチノイズと内周歪みと静電気除去グッズNON-STAT(新製品\16,500)について 中川 伸

  NAGAOKAのKILAVOLTとFIDELIXのNON-STAT

レコードにスクラッチノイズは付きもので、原因は傷や小さな砂埃が主です。静電気は埃の引き寄せに深く関与していて、その付着した砂埃の上を針が通過するとパチッと音がすると同時にV溝へ砂粒を反時計方向へ叩き込んでしまう場合があります。私はその状態を顕微鏡で見たことがありますが、これを取り去るには時計方向に力を加えると取れやすく、実体顕微鏡で見ながら慎重に砂粒を削除しました。これより前に逆転クリーナーと云うのがK氏のアイデアで存在していました。

因みに単位面積あたりの重量は、象の足で踏まれるよりもハイヒールの踵で踏まれる方が強く、レコード針は更に強いので塩化ビニールに叩き込んでしまうのです。そのためどんどん押し込まれて行って取れ難くなって繰り返すスクラッチノイズになるのです。顕微鏡写真で見ましたが針圧によってレコードはこんにゃくの上にゴルフボールを置いたかのように凹みます。しかし、弾性変形なので通り過ぎれば元に戻ります。

また、埃が静電気で盤に引きつけられ、内周に進むに従い、針にその汚れが蓄積して、内周で歪みが増える原因ともなります。そのため大切なレコードをスクラッチノイズと歪から守るには日ごろのケアが最も大切だと言えるでしょう。導電性ブラシは除電はちゃんとしますが、ブラシがきれいでないと埃を取るどころかかえって埃を置いてきます。テーブルにこぼした水を乾いたタオルで拭けば水はタオルに吸い取られますが、濡れたタオルで乾いたテーブルを拭けばテーブルが濡れるのと同じ原理です。

1976年頃でしょうか?ピストル型の除電器を使っていました。新しい時はよく効いたのですが、徐々に動作が甘くなって効果が弱くなり、やがて壊れてしまいました。今、売られている製品の耐久性は分かりませんが、壊れた後に使っていたのはナガオカからの電池式のもので、これは40年ほど経った今でも元気に動いております。そこで上の写真のような同類の除電グッズNON-STATを作りました。静電気は物質を擦り合わせると発生します。どちらがプラスでどちらがマイナスになるかは以下の帯電列で決まります。

プラスに帯電しやすいものから順に  アスベスト> 毛皮・人毛> ガラス> 雲母> 羊毛> ナイロン> レーヨン> 鉛> 絹> 木綿> 麻> 木材> 人の皮膚> 亜鉛> アセテート> アルミ> 紙> エボナイト> 鉄> 銅> ニッケル> 金> ゴム> ポリスチレン> 白金> ポリプロピレン> ポリエステル> アクリル> ポリウレタン> ポリエチレン> セルロイド> 塩化ビニル> テフロン マイナスに帯電しやすいものまでです。

これらから分かるように塩化ビニールはマイナスに帯電しやすい物質でテフロンと擦った場合にはプラスに帯電することを意味しています。そこでマイナスの帯電を中和するにはプラスイオンを吹き付けなくてはなりません。世の中の除電グッズはプラスイオンとマイナスイオンの両方を放出するもの、プラス側だけのもの、マイナス側だけのものがあります。このうち効果があるのは前者2つの筈ですが、マイナスイオンは体に良さそうなイメージがあるのでプラスイオンについては触れてないものもあります。ですから真にマイナスイオンを放出するグッズの有無とその効果は不明です。

  シシド静電気のSTATIRON M2とNON-STATと大きさを示すマウス

私は確かな根拠に基づきたいので、回転セクター方式の電界強度計を使って静電気について調べました。この原理は電極の前のシャッターが回転することによって開いたり閉じたりします。この変化をメーターで表示しますが、基準は200mm角の金属板を50mm離れたところで校正した電圧によるものです。これは静電気の専門会社による確かな製品なので¥90,000でした。

ですからここでの記載は、空想ではなくて確かなものと思っていただいて構いません。ただ、静電気は湿度が低く温度が低いときには強く発生しますが、逆の場合は静電気が空気中の絶対湿度を伝わって、簡単に漏れてしまいます。夏場だと擦っても少ししか電圧が出なくて、しかも早く消滅してしまいます。ドアノブでパチッと衝撃を受けるのは決まって冬場です。より正確な内容は冬場に測って追加するかもしれません。

マイナスに帯電したレコードへ向けて本機からプラスイオンを振り掛けると、最初はどんどん中和してゆき、やがてゼロになります。その後は少しだけプラスに帯電されますが、それ以降はプラスとプラスで跳ね返されるので少しだけプラスになったところで安定します。レコードを再生すれば摩擦によって再びマイナス方向に徐々に帯電されて行きますが、-1000V程度なので、静電力としては弱めです。

使い方は、針をおろす直前に、盤から約20cmの位置から4ないし5秒照射するだけです。これでスクラッチノイズや内周での歪みを減らすことができます。レコードを心おきなく楽しんだり、デジタル化するには必需品だと思います。006Pの9V電池を使用しますが1回につき5秒ほど照射して約3000面(アルカリ電池に於ける計算値)が使用可能で、LEDはバッテリーチェックも兼ねています。電源スイッチは、押すとONでもう一度押すとOFFになるタイプです。底面の金属に手を触れながら照射することで本来の除電能力が発揮されます。

レコードの除電は数秒程度なのでプラスイオンもマイナスイオンも体への影響は無視できます。また、微かなオゾン匂が発生しますがこの影響についても無視できます。イオンの出口に指を近づけると衝撃を受けることがあるのでご注意ください。限定数は400台なので、関心を持たれましたなら当社か販売店様へ早めの予約を宜しくお願い致します。

NON-STAT \16,500(税別) 送金先 三井住友銀行清瀬支店 普通口座 3064084 有限会社フィデリックス 204-0022 東京都清瀬市松山2-15-14 TEL&FAX 042-493-7082 mail: info@fidelix.jp (2019年10月19日)

  NON-STATの内部写真と電圧波形 10:1のプローブなので20V/divで、出力電圧は約+7,500Vです。

技術的な補足 これに使われている高圧トランスは実は28年ほど前に作ったものですが、技術的には面白い内容もあるので以下を記載します。

フィデリックスは、超低ノイズ技術を得意としているので、NTT研究所や東大や測定器メーカーなどからの仕事依頼がありました。1990年頃、半導体製造装置の一部として、超高感度な光センサーが必要でした。全体はA社が企画し、H社の光電子増倍管とM社の高圧電源と、フィデリックスの低ノイズで高感度なIV変換器を手のひらサイズにセットしたものです。最終組み立てはフィデリックスで行いました。因みにIV変換部はノイズ選別したMOSFET入力のDCアンプです。ガス濃度を一定にするために、遠くの炎の燃え方を観測するのだそうです。

1990年頃の2年で1000台ほど納めましたが、これは世界の半導体製造装置の約半数に入ったそうです。途中で性能アップを要求され、高圧電源も当社の設計になり、この時に作ったのが今回のサイン波で動くローノイズ電源で、セリニティー電源の基礎となりました。この回路を考えた人は、BAX型トーンコントロールも考えた人で1958年の発明だそうです。すごい天才がいた事には驚きで、PCだとその図5が見えます。インダクタを通じてトランスのセンターに電源供給する発想が凄いのです。後から考えれば普通のことですが、、。

ナガオカはCDI方式(自動車やバイクの点火プラグ用)といえるパルス駆動ですが、こちらは68kHzのサイン波に近い動作なので、EMIノイズを撒き散らす可能性は低い筈です。しかし、次世代では異なった製造方法になったので、ここで作った電源は100台の納品で終わってしまいました。なので高圧トランスは400個ほどが余ったままでしたが、これが今回の用途にピッタリで、限定数400の理由です。放電針の鋭さはとても重要で、安全ピン程度では全く性能が出ませんでした。因みに針は想像以上に高価でした。参考までに類似品の価格です。

    

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