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AB級アンプをシミュレーションする 中川 伸

 AB級アンプにおける入力電力と出力電力と損失電力(発熱の原因)と効率の関係を調べるには、1)実験で出す方法、2)計算で出す方法、3)シミュレーションで出す方法の3つがあります。 最終的には1)をやらなくてはなりませんが、最も簡単に調べられるのは3)の方法です。ここで使うシミュレーションソフトはSCATのDEMOバージョンで無料のものです。 SCAT(Switching Converter Analysis Tool)は宗城大学の中原正俊教授が開発したもので、正規版は約20万円で、計測技術研究所から発売されています。無料版はSAVEとCOPYの機能だけを削除したもので、他は全く同じです。
 私はオーディオ回路と精密アナログ回路が専門ですが、ひょんなことからスイッチング電源回路を始めることになりました。最初のうちは慣れなくて、FETをいくつも壊したりしていました。あることがきっかけでSCATを知ることになり、使い始めました。当然ながら使い込むにしたがい、どんどん上手くなってゆきます。そして殆どのスイッチング電源の回路を動かせるようになったので、 計測技術研究所のサイトにちょっとユニークな回路の投稿などをやっていました。 このSCATと、自分で作ったトランスを設計するためのEXCELプログラムでほぼ最終に近いものが簡単に設計できます。 そんな中、あるセミナー会社が、SCATのセミナーを開きたいということで、計測技研に問い合わせたら、私が紹介され、これがきっかけで、今までに6社ほど、合計20回以上のセミナー講師をやることになりました。私はこの使い慣れたSCATでクラスAB級のアンプの解析をしてみました。私が正規版で作ったファイルはDEMOバージョンでも読み込めるので誰もが簡単に解析できます。 先ずはSCATのDEMO版をダウンロードをします。 次は自己解凍形式のclass-AB.exeをダウンロードし、ダブルクリックしcvtとshpのfileに解凍されます。それをSCATのFileのOpenからclass-AB.cvtを開きますが、SCATファイルは実はcvtとshpで1セットなので同じ場所に入れる必要があります。 解析したい数値に変更をしますが、ダウンロードをすると詳しい説明書も付いてきますのでそちらをじっくりごらんになってトライしてみてください。 スイッチング周波数が100kHzならAnalysisのTransientで200を指定して走らせます。すると1kHzの2波が出てくるのでとっても見やすくなります。波形が出なければWindowのWindowのWVFをクリックします。 以下の写真はその様子です。

 一番上は負荷電圧で、次がNPNのトランジスタに加わっている電圧で、ピークのところでは電圧が0V近くまで下がっています。 次が負荷に加わっている電力なので、0クロスの部分では0Wになり、サイン波の山と谷では大きくなるような2kHzの波形になっています。 その下がトランジスタで消費される電力なので電圧×電流が設定されています。山の部分では加わっている電圧が低くなるので電力も小さくなり、M字のような形になっています。このM字を平均したものがNPNのトランジスタで消費される平均電力で、枠内に表示され、PNPもありますのでこの2倍が発熱の原因になります。その下のシアンの色はトランジスタに流れている電流を選択したためで、この枠内には平均電流と実効電流が表示されています。上の枠で選択した項目の細かい内容が示されるのです。その下の波形は負荷に流れている電流で、下側の半波はPNPが受け持っています。結局のところ、入力電力−出力電力=損失電力(発熱の原因)という関係になり、効率は出力電力/入力電力になります。 そしてAB級のオーディオアンプの試験条件は110Vで実際にクリップする出力の8分の1の出力で計りますが、詳しいことはここのページを参考にしてください。 そこで、8分の1の出力の条件に近い値に変更し、SCATで解析することで、かなり正確な損失電力を算出することが出来ます。このとき40度以上に温度上昇しない放熱構造にする必要があります。 最近では温度上昇までシミュレーションできるソフトがあって、私も使っていますが、それについてはまた、別な機会に触れることにします。SCATはスイッチング電源の周波数特性を調べることや負荷応答を調べることもできますし、フィルターの周波数特性も見られます。しかし、このような場合、私はMicro Cap9のDEMOバージョンを使っていますが、フィルターの設計には特に優れたソフトで、回路図エディターとしても綺麗です。 ここからダウンロードできますし、このページ次のページが参考になるでしょう。
ダウンロードしてあった少し古い参考資料です。東陽テクニカ様のご好意による貴重な再アップですが、質問は不可だそうです。

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