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トーンアームとターンテーブル2 (曲がったアームの動作) 中川 伸

レコードの溝はピアニッシモで抵抗が少なく、フォルテでは溝の振幅が大きくなって抵抗が増え、この時、前方に強めに引っ張られます。 その場合の曲がったオフセットアームとピュアストレートアームが音の大小における摩擦変化で生じる振る舞いをyoutubeにアップしました。

  offset tonearm

  pure straight tonearm

赤い部分がカンチレバーに相当し、曲がったアームは伸びる余地があるので左右に揺れます。しかし、真直ぐなアームは伸びきっているので、伸びる余地が無くて揺れません。厚紙と画鋲と細い銅線とセロテープで誰もが簡単に作れ、動かしてみると、これまたなんとも面白いです。 さて技術的な説明ですがその前に、問題です。 図1でレコードが回転すればスタイラスSは引っ張られますが、その方向はAでしょうかBでしょうか?

多くの人が直感的にAと思うかもしれませんが、それはCの位置に棒を立てて、アームが内側に動けなくした場合です。Cが無いにも関わらず内側には進まないので答えはBです。つまりスタイラスSがB方向に引っ張られているのを支点Fが支え、釣り合っている状態です。 このため赤いカンチレバーの先は外側に曲がります。インサイドフォースキャンセラーをオフにして観察すればすぐに分かります。

2016年9月9日に補足「この部分にもう少し丁寧な説明を加えれば、レコードの回転によってスタイラスが引っ張られるのは先ずはA方向です。一方、アームがスタイラスを動かないように支える方向はBとは逆向きです。この逆向きのBとAをベクトル合成すれば内周への回転力が生じます。でもスタイラスが内周に進めないのはレコードの内壁が押し戻しているからです(内壁の針圧が増す)。この押し戻す力とA方向の2つのベクトルを合成すればB方向そのものになります。結果的に、レコードが回って引っ張るのはB方向になるのでカンチレバーは外向きに曲がるという訳です。順を追って細かく考えても、シンプルに考えても、当然ながら両者が正しければ同じ結論に達します。」

この事は内壁の針圧の方が大きいことを意味し、一般的に外壁の約10%増しとされています。2gの針圧なら45度なので、止まっていれば1.4gづつになりますが、回れば内壁は1.47g、外壁は1.33gに変わります。この差がインサイドフォースの原因になります。そこでアームに外向けの力を加えることで内壁と外壁の針圧を等しくするのがインサイドフォースキャンセラーで、最初に搭載したのはSMEだと思います。

Bの力は音の大小で変わるので一定ではありません。そのためYouTubeの動画のようにアームが横揺れしますが、同時に、インサイドフォースも音の大小で変動するので、一定の力ではキャンセルが出来ないだろうと突っ込みが入りました。そこでメーカーによってはアンチスケーティングと呼ぶことにしました。溝の無いレコードをかけても内周に滑らないようにしたもので、両者の機構は同じです。

インサイドフォースは実は定義が無いので2つの見方があります。上記SMEのようにカートリッジ側から見るか、それともレコード側から見るかです。 溝の無いレコードをオフセットアームで掛ければ内周に向かって滑ります。この力をインサイドフォースと考える人もいます。A方向に引っ張った場合に生じる内向きのベクトルのことです。

ピュアストレートアームだと外周に置けば内周に滑り、内周に置けば外周に滑り、ある位置で止まります。この位置こそがトラッキングエラー0の位置です。ここで、滑る力のことをスケーティングフォースと言い換えれば、外周ではインサイドに、内周ではアウトサイドに、トラッキングエラー0の位置では0になる力といえます。でも、カートリッジの側から見たインサイドフォースはどの位置でも0になります。なぜならば、もしも横向きに力が加わればアームが横に動くことによって必ず0にしてしまうからです。これが0 SideForceと命名した理由です。 カートリッジ側から見たものをインサイドフォース、レコード側から見たものをスケーティングフォースと新たに定義するならば、似て非なるものとして議論は混乱しません。 因みにインサイドフォースとスケーティングフォースをレコード再生で比べれば、前者は時として重要で、後者は殆ど意味を持ちません。

もしもトラッキングエラーがとても重要なら、トラッキングエラー0のポイントで音が最も良くなる筈です。オフセットアームなら30%ほど進んだ点と95%ほどの2点、0 SideForceなら60%ほどの点で最も良くなる筈です。でも実際の経験では、いずれもスタート点が最も良くて、終わりが最も悪いのが常です。線速度の違いの方がずっと支配的なのです。計算からはトラッキングエラーが大きいと音の大きいところでは歪が発生する筈ですが、私は気を付けて聴いていても一瞬なのか、感じたことがありません。

私が敏感なのは針の汚れや摩耗や針圧で、重すぎると繊細な聴きたいニュアンスが埋もれがちになり、軽すぎると浮ついた音になります。0.1グラム刻みでこれは調整します。線速度も勿論よく聴こえます。しかしトラッキングエラー0の点で良くなったと感じたことははっきり言ってありません。もしも全周が一定振幅のテスト信号なら、オフセットアームの方が歪は少ない筈です。でも音の大小でアームが横揺れを起こすので、この問題の方がずっと敏感に聴こえます。つまりトラッキングエラーは大して重要では無かったとの判断から横揺れしないピュアストレートの0 sideforceのみを作ったという訳です。従来の曲がったアームは静特性重視で、音楽にとって重要な動特性は考えていなかったと言えば言い過ぎでしょうか?

ピュアストレートアームの歴史ですが、レコード再生の最初はこれだったと思います。間もなくトラッキングエラーを少なくするオフセットアームに移行したと思います。その後は江川三郎氏が1980年頃に初めて制作し、記事にしたと思います。雑誌記事を見てSTAXが始め、YAMAHAとVESTAXも追従しました。VESTAXは音の良さに気付いていたのは当然でしょうが、DJのスクラッチで針飛びが起きにくいということから多くの機種に採用しました。最近ではViV Laboratoryに次いで、FIDELIXが出しました。

さてピュアストレートアームはアンダーハングになるので、その計算方法です。音溝の中央付近でトラッキングエラーを0にすれば全面で均等のずれになりますが、内周ほど敏感なので私は半径90mmの位置で0度、つまり60%ほど進んだ点で直角三角形となるようにしました。ターンテーブル中心とアーム中心の距離は232oで半径が90oだと、(232×232)−(90×90)の平方根が針先とアームの中心の距離になるので214o、つまりアンダーハングは232-214から18oです。

0 SideForce をご購入頂いた方から、それまで使っていた曲ったアームはもう必要ない、ということで下取りをさせて頂きました。それをデモ用にということでアームが2本付くプレーヤーを選んだら、私が高校生の時に買ったCEC社のFR-250のアイドラードライブになりました。 コンデンサーやオイル交換などの整備をしても、アイドラーノイズが多く、サンドペーパーで磨いてもなかなか減りません。そこで写真のようなものを作りました。真鍮のプーリーにOリングを被せたものですが、これで非常に静かになりました。考えてみれば整備された競技用トラックを走る自転車のタイヤみたいで、所有しているLENCO社のL75も同様に先が細くなっています。FR-250用アイドラーは20個だけ作ってみましたので、ご希望の方には\7,000(税送料込みの直販のみ)でお分け致します。オリジナルの126gに比べ375gに重量アップしている点も低ノイズ化に貢献していると思います。

1週間ほど後に興味深い内容をこの後ろに続けますので、また、ご覧になってください。 (2018年9月2日)
MITCHAKU-Zという製品情報が加わったので、トーンアームとターンテーブル3(MITCHAKU-Zの誕生)に変わりました。

  
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