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ダイレクトカップルカートリッジ MC-F1000 がほぼ完成しました。 中川 伸

当社のホームページカートリッジのはなし2で2016年に計画していたMC-F1000が、ほぼ完成しました。コイルの有効直径を0.8mmと極小にしたのが難産の主原因でした。図面を書くのは簡単でしたが、作れる所はやっと見つけ、届いた実物の小ささに驚きました。これを使ったカートリッジはどこの誰が作れるの?と。半導体の微細化競争中に、20ナノなら作れる時代に10ナノの図面を書いてしまったかのようです。

黒い線の間隔が1mmで、カンチレバーの直径が0.6mmです。

当社では1990年から1992年頃にかけてコンデンサーカートリッジ(CP-VA)の発売を計画していました。ところがこれも作るのが非常に難しくて5個だけを作り、出来の良かった3個中の1個を熱心なユーザーに販売して終わりました。それは今でも大切に使われております。

その基本構造は、JVCのMC-L1000に似ていて、カンチレバーを通る前の針の動きをダイレクトに変換する方式です。考え方からすればSTAXのCP-XやCP-Yも同じで、NEUMANNのDST62にも似ていました。私はSTAXのCP-XやCP-Y使っていたので、針先で拾うメリットは十分に分かっていました。とにかく情報量が多くて細やかなニュアンスがたっぷりです。

カッティングマシンを作っているノイマン社はステレオ初期であっても針先の動きを音にすべく写真のようなDST-62を作りました。針先の動きを音にするのはオーディオ技術者にとっては夢とも言えるでしょう。やはりカッティングマシンを作っているWESTREXでも10Aというカートリッジでやはり針先変換をしていました。NEUMANNの構造はカートリッジ屋さんでも、なぜこれでステレオになるのか首をひねる方もいらっしゃいます。しかし、コイルとヨークの形ではなく、コイルと磁束の形で決まるので、磁束が膨らむフリンジング効果を利用して、実はよく考えられています。でも、上下動には弱いらしくローコンプライアンスの重針圧タイプ(4gから7g)になっています。

NEUMANN DST62の構造と写真

WESTREX 10Aの原理に準じた大沢式カートリッジ

MC-L1000内部の磁性ゴミと掃除後

電磁気シミュレーション結果と3D CADの図面

あるお客様から調子が悪い MC-L1000をチェックして欲しいとの事で開けてみたら、写真の様に磁性ゴミが一杯に付着して動かなくなっていました。丁寧に取り除くと見事に蘇りましたが、自分のMC-L1000はまめに掃除していたので慣れてはいました。つまり、このタイプに有りがちな欠点を激減させるのが今回のマグネクリーン構造で、別な強力マグネットで磁性ゴミを吸着するという考えです。すでに試作段階でもここに少量の磁性ゴミが付着しており、この分が内部に入るのを妨げたことになります。今の時代は電磁界シミュレーションソフトや3D CADを使うことでスムーズな設計が行えます。

針圧が重いと多くの条件で安定な動作をしますが、塩化ビニールの変形量が増えるので、細やかな音が出難くなります。逆に1gを切るとスクラッチノイズが増えますが、溝の中にある小さな粒を弾き飛ばす力が弱くなるからです。そのため目標は針圧1.4グラムとしました。他の仕事も忙しくて、カートリッジに集中している訳にもいかなかったのですが、だんだんと製法がまとまってきました。コイルは17μ線の4ターンが3層なので計12ターンで、インピーダンスは6Ωです。

さて、もう一つの難題はヨークです。これはパーメンジュールが最も飽和磁束密度が高いので高出力が得られます。ただし硬くて脆いので加工は非常に困難なため、2個セットで\30,000でした。簡単に作るには、パーメンジュールと樹脂の粉を混ぜて型に入れて焼き固め、樹脂は燃えてパーメンジュールの塊が出来ます。型代は\1,000,000以上になりますが、その代わりに1個は\300程になります。数量が出ることが分かっていれば全然問題無いのですが、作れるかどうかもわからない段階なので保留にしていました。ヨークは普通に考えれば45度+45度の90度でクロストークが最良になりそうですが、あくまでもそれは磁束の角度であって、ヨークの角度ではないのです。70度から80度のヨークにする事でフリンジング効果によって90度になります。

クロストークはベストの点で音質がベストになると思うかもしれませんが、自然音も音楽も録音も部屋でも左右の音は混ざります。過去の実験では、逆相でわずかに漏れた方が倍音や余韻が豊かに聴こえて、私は好きです。しかし、多すぎると違和感を覚えます。聴感でベスト角を調べるために加工しやすい快削性電磁純鉄で実験をしたら0.18mVが出たのですんなりとこの材料に決まりました。フィデリックスにとってはLEGGIEROやLIRICOといった-156dBVの超ローノイズアンプが有るのでもう充分です。

ホームベース状のコイルなので針圧変化による出力変化は少ないです。結果、反りや揺れに対しても安定度は高まります。また、コイルのセンターには穴が空いていて、とても軽くなってます。スタイラスとカンチレバーとコイルは写真の様に密接に結合するので、真にダイレクトカップリングです。コイルの前後揺れ共振を心配しましたが、小さいために全然問題にはなりませんでした。むしろコイルの引き出し線をグリスでダンピングしないと鳴きが出ることには驚きました。ダイレクトカップルと軽量化によって、何らストレスのない実に軽やかで爽やかな高域がすんなりと出ました。バイオリンやソプラノや女性ボーカルは特に美しく、テレサテンの思い詰めた恋心などは心に刺さります。

ダイレクトカップリング方式なのでカンチレバーにはアルミを使う事で正確な角度を出し易くしました。今では、音速の速い材料でカンチレバーを作ることが流行っていて、これ自体は良いのですが、スタイラスを取り付けるには、大きめの穴を開けて挿入しないと割れるので、その分だけ角度が甘くなります。また、その隙間には接着剤があり、その硬度を問題視する専門家もいらっしゃいます。つまり良さと悪さとが同居しているので、宣伝効果ほどに良くなるとは限りません。

写真は左からダイヤ、ルビー、ボロン4個、ベリリウム3個で全てが空芯MC

今回のものはカンチレバーを通らない方式なので、アルミパイプに小さめの穴を開け、圧入という方法でダイヤ針を入れるので精度の高い強固な結合になり、接着剤で外れない程度の補強をします。そして私の知り合いのカートリッジの設計者たちは、意外にもアルミ好きな人たちがいらっしゃいます。

理論的にはラインコンタクト針が優れますが、実際には、よく聴いていたレコードだと溝の底に汚れが溜まっているので、それをラインコンタクトだと掻き出して、針に汚れが付着して歪み出します。針で汚れを取ることを繰り返せばだんだんと音は良くなります。しかし、よく聴いていた愛聴盤は何回か掛けなければ本領が発揮されないという現実があります。そこで、選んだのが楕円針です。

多くのMCカートリッジの支点構造は、例えば直径0.1mmのピアノ線を0.2mmといった長さで使っています。今回は1992年に作ったCP-VAと同じものになっています。この長さは音質へすごく影響を与えますが、多くのメーカーはこの長さをノウハウにしています。短いと明るく元気な音になり、長いと穏やかで上品な傾向になります。

ダンパーは、硬度と反発係数から材料を選び、適した形状にします。ダンパーについても音はすごく変わるのですが、各メーカーともやはりノウハウにしております。ダンパーへの圧力が緩すぎると高域にピークができ易く、圧力が強すぎるとフラットにはなりますが抑圧された感じにもなるので私は若干緩めが好きです。

ボディは、硬くて錆びにくいアルミを使っております。直径2.6mmの止めるネジはタップ無しとタップネジの両方が用意されていて、いろんな使い方ができます。できるだけ強固にカンチレバーアッセンブリーを支えられるよう継ぎ目のない一体構造としました。カバーも同じ材料で作っていますが、こちらはグレーのアノダイズ(アルマイト)仕上げとしました。強固なボデー設計は低音楽器の明瞭度と力感に寄与し、スリムな形状とは逆のイメージです。

古くは15度のバーティカルトラッキングアングルでしたが現在では20度あるいは23度ということになっています。しかし、カンチレバーが短くなってきているので実際には20度から26度位にまでなってきているようです。私は可能なら15度より低い方がベターだと個人的には思っております。それは、音楽のようなダイナミックな信号に対してはフォルテでは摩擦が多く、ピアニッシモでは少なくなり、このためカンチレバーの角度も引っ張られて変動し、ボディはフォルテとピアノで上下運動をし、時間軸が変動します。なのでバーティカルトラッキングアングルは小さい方が良いことになります。しかしMC-F1000では図面を書いても、なかなか小さくはできなくて針圧を掛けない場合で19度、かけて17度位が限界でした。

オーディオマニアは、トラッキングエラーやアームの水平といった角度にこだわる人は多いです。私は針の汚れには最も敏感で、その次は針圧で0.05g単位では調整します。しかし角度はほとんど気になりません。普通の曲がったアームは35%進んだ所と音楽の最内周でトラッキングエラーが0度になります。でもそこで音が良くなった経験はありません。いつも最外周が1番良くて最内周が最も悪いのでトラッキングエラーとは逆です。ピュアストレートアームでも最外周がベストです。また、アームの上下位置を変えても針圧を同じにすれば殆ど分かりません。塩化ビニールは柔らかいので針圧で変形しながら進んでいるからです。因みにカンチレバーが左右に少し曲がっていれば、その分だけボディをわずかに曲げて取り付ければ構造上から何ら問題ありません。

オーディオマニアはネジを強く締め過ぎる性質があります。締めすぎてセラミックヘッドシェルを割ってしまった話はいくつか聞きます。プラスチックボディのカートリッジは、変形して底が返って浮いていたのも見たことがあります。2gの針圧に相応しいトルクにしないと逆効果になりますのでご注意ください。

負荷インピーダンスは常識からすれば6Ωに対して数倍以上であれば良い事になっています。しかし実際にはインピーダンスが高いほど、どんどん良くなって行きます。フィデリックスでは1993年発売のMCR-38以来、G(ギガ)Ω台という常識外の値にすることで良い結果を得ています。最近になってこの理屈が分かってきました。量子力学でのトンネル効果によって微小電流では接触抵抗が上がる事や接点を通れば音が悪くなる事、高いインピーダンスで受ければ音が良くなる事が説明できます。

ダイレクト構造のカートリッジ例 CP-40 CP-X CP-Y IKEDA9c MC-L1000 AT-ART1000

暫定スペック
形式        ダイレクトカップルによるMCカートリッジ
針圧        1.3gから1.6g(あくまでも推奨範囲)
周波数特性     8Hz-45kHz (テストレコードはAD-1とTRS-1005を使用)
出力電圧      0.18mV 5cm/sec 1kHzラテラル
インピーダンス   6Ω
負荷インピーダンス 10Ω以上、できればG(ギガ)Ω台
有効コイル直径   0.8mm (17μ線による4ターンが3層で12ターン)
自重        8.4g
針先の高さ     17mm
取り付けネジ    タップなしとタップ有りの2種類
磁性ゴミ対策    マグネクリーン方式でブロック
付属品       針カバー、ヘッドシェルMITCHAKU、スタイラスクリーナーSASUPA

CA-TRS-1007 full scale 50dB B&K2317

AD-1 full scale 50dB B&K2317       TRS-1005 full scale 50dB

1kHz後の4から100Hzのスイープ信号で、MC-F1000の低域共振周波数(f0)はMITCHAKUヘッドシェルと0 SIDEFORCEアームの組み合わせで約8Hzでした。 反りや偏心への追従性を重視するなら10から15Hz、状態の良い盤での音質重視なら7から10Hz位が適正と言われているので、ほぼベストです。近日中に以外にも重要なこのf0チェック機能とエージング機能を持った「f0 Checker」は販売予定です。50kHzまでの周波数特性も測ってみました。20kHzに1次共振、40kHzに2次共振の影響が出ていて理論通りの動作をしています。2次共振が少し高めになるのはカンチレバーの太さによる影響です。50kHzにも追従していてコイルを軽量化したメリットがしっかり出ています。

その他使用上の注意

推奨MCヘッドアンプやMCイコライザーの入力換算ノイズはなるべくなら-150dBV以下を選んでください。(LEGGIEROや LIRICOは-156dBV)
推奨負荷インピーダンスは10Ω以上ですが、可能な限り高い値を推奨します。(LEGGIEROや LIRICOは1GΩ)
空芯の良さを生かすために非磁性パーツに留意したアンプを推奨します。 LEGGIEROや LIRICOなど。
かってない程にデリケートな構造なので、取り扱いには十分な注意をお払いください。針の上げ下ろしは必ずリフターをお使いください。針の掃除には付属のサスパの白い方を使ってカンチレバーの根本から先端に向かって拭いて下さい。黒い粘着部は優しく当てる程度にしてください。
コイルの側にピンセットを近づけることは基本的に推奨しませんが、どうしても行う場合は必ず非磁性のステンレス製などの先の細い高精度なものをよく整備してからお使いください。
レコードはまめにクリーニングすることをを推奨します。専用のクリーニングマシーンは望ましいのですが、ホームページのLPレコードを最大限に生かす方法(その1) クリーニング方法または私流のカートリッジキーパーとレコードケアに書いてある簡易な方法でもかなりの効果があります。

暫定価格 \440,000(税込) 

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